1.で指摘したように、現行の重度障害者等包括支援事業の運用では、それぞれの他の自立支援給付のサービスをまとめているというだけにすぎない。では、他のサービスに比して、「包括」であるようにするためにはどうすればいいか。いくつかの提案をしたい。
★支給決定単位を4時間=1単位に
一番のポイントは、介護保険の小規模多機能型居宅介護の考え方と同様に、包括=定額制であることを位置づけることである。重度障害者等包括支援事業の場合は、4時間を一単位とした定額制なので、支給決定単位を4時間1単位にすることによって、定額制に近づけることができる。その際、注意しなければならないことは、重度障害者等包括支援事業の対象になる最重度の方の場合、多くは二人介護を行わなければならないことが多くあるということである。この場合は、二人介護を前提に支給決定をださなければならない。この考え方を具体的にすると
1)1類型で想定されるモデル。
ALSなどの難病の方をその対象像として示している1類型は、生活の典型的なモデルは、24時間の介護者がついての活動であり、基本は居宅介護(重度訪問介護)サービスの連続利用というイメージが強い。
そうすると、重度障害者等包括支援事業での連続利用と、重度訪問介護での連続利用の差は、おそらく資格要件にのみ絞られるだろう。
重度訪問介護の場合は、15%加算があるが、重度障害者等包括支援事業の場合は資格をもっていない方もOKということで、15%の減算、という解釈になろうか。
ただ、通所看護のような日中活動の拠点や、レスパイト的な病院以外の短期入所の場の必要性なども一方でいわれることもあり、その場合は、2)の2類型想定に似通ってくるだろう。
2)2類型で想定されるモデル
2類型はいわゆる重症心身障害者をその対象像としている。?類型の方の典型的な生活モデルは、横浜の「朋」や西宮の「青葉園」などが実践として示してきた通所施設(生活介護)を支援の中心においた生活モデルである。
このモデルで考えたときに一番大きな問題は、現行の支給決定方法でいくと、生活介護の単価が重度障害者等包括支援事業の支給決定にしてしまうと低くなってしまうことである。また、共同生活介護を利用する人へのヘルパーの派遣ができなくなってしまう(かもしれない)ことである。この二つの問題が解消されない限り、すでに生活介護や他のサービスが使えている方が、あえて、重度障害者等包括支援事業の支給決定を受けることは考えにくい。
そうすると、考えられるのは、サービス基盤がとてもうすく、重心の方の日中活動がない地域や、今まで全くサービスを利用したことがない方が、取りかかりとしてサービスの利用を始めていくときに利用する。または体調の低下が著しく、これまで生活介護を利用できていた方が、体調の変化によって利用できたりできなかったりした時に利用する。といったことが考えられる。前者は単独の重度障害者等包括支援事業所でも考え得るが、後者は生活介護に付置するような形で考えていくことになると思われる。
ただこの場合も、現行の制度下では認められていない入院時のサービス提供を認めていかなければ、有効になっていかないことを付け加えておく。
3)3類型について
3類型はいわゆる強度行動障害の方がその対象像である。
3類型に関しては、行動援護との単価差が大きすぎ、生活介護の単価差との二重差によって、残念ながら、有効なモデルが出し得ない状況になっている。行動援護のサービスを無資格者ができうること以外にない。
4) ウィークリーモニタリングについて
今回の研究事業で、実際に重度障害者等包括支援事業を5ケースについて行っているNPO法人寝屋川市民たすけあいの会地域ケアセンター「ヘルパーステーションほっと」で基本となるウィークリープランから、どの程度の変動があったかについて、ウィークリーモニタリングを行った。
結果は、「表4:重度包括プラン変更状況」に示した。事業所の都合やご家族の都合、ご本人の体調や予定という変動理由にて、変動率が高い方と低い方の差が大きいが、高い方については、80%を超えている。
しかしながら、変動のパターンが決まっている方がほとんどであり、果たして、ウィークリーモニタリングが必要かどうかについては、現行の制度でのマンスリーモニタリングで十分であるという担当者の所見をいただいている。